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第9話 護衛騎士との会話

last update Last Updated: 2025-04-26 08:40:20

 翌日は学校を休んでしまった。

理由は前日池に落ちてしまったこと、、護衛騎士のジョンの入学手続きを済ませなければならなかったからだ。

「ユリアお嬢様。先程私の入学手続きが済んだそうですよ」

昼食後、自分の記憶を失った手掛かりを探す為に自室の本棚を漁っていた私の元へ、1枚の書類を手にしたジョンがフラリと現れた。

「……相変わらずノックもしないで貴方は部屋に現れるのね。私が着替えでもしていたらどうするのよ」

ため息を付きながら、手にしていた本を棚にしまった。

「だったら、ユリアお嬢様も少しは警戒心を持ったらいかがですか? 一応貴女は命を狙われているのですよね?ま ぁ、昨日の池ボチャが演技でない限り……」

「ちょっと酷いじゃない。あんなドレス姿で池にわざと落ちるはずないでしょう? 貴方がいなければとっくに溺れていたわよ。……そう言えばあの時、どうして貴方があの場に現れたの?」

するとジョンはため息をついた。

「やれやれ……そこから説明が必要だったとは……。いいですか? 私は今迄メイドに扮してユリアお嬢様のお世話係として護衛していました。昨日は天気がいいので外のテラスで紅茶が飲みたいとおっしゃる我儘なユリアお嬢様の願いを聞き入れ、お茶の準備をして戻ってみれば、お様がフラフラと庭の池に向かって歩いていく後ろ姿を見かけたのです。一体何をしに行くのかと見守っていると、いきなり池に飛び込まれたのですよ。そこで私が慌てて駆けつけた次第なのです」

「そうだったの。ところで、私がお茶を飲む前、何か異変は無かった?」

「いいえ、特には」

「そうなの? だって一ヶ月も私の側で護衛をしていたなら、どこかいつもと違う様子が分かったりするものじゃないの?」

だって仮にも私の護衛騎士であるのに。

「あいにく、人の心の機微には疎いもので。まぁ……単にユリアお嬢様は私にとって、護衛の対象であるだけで、人間的に一切興味を持つべき対象ではありませんからね」

「そ、そう……」

どうもこのジョンと言う護衛騎士、顔は恐ろしいほどいいのに性格がかなり歪んでいるように思える。

「ねぇ、ジョン」

「何でしょう?」

「貴方……友達いないでしょう?」

「そうですね。でも必要ありませんから」

「そう、友達がいないなんて可愛そうね」

するとジョンが奇妙な顔つきになる。

「何よ?」

「いえ……よく、その様な台詞を言えるなと思
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